吉濱ツトム『ブレイン・マネジメント』レビュー

精神

今回は、発達障害で苦しんでいる私に、改善するきっかけを与えてくれた著者である、吉濱ツトムさんの『ブレイン・マネジメント』(ビオ・マガジン、2020年)のレビューを書いていきたいと思います。

人間の脳の性質

飢えと戦争の歴史の結果

こちらの本で伝えたいことは、主に「現代人は身体の感覚に従ってはならない」ということです。

人間は、放っておくと、すぐに怠けたがる傾向があります。

たとえば、なるべくゴロゴロしようとしますし、炭水化物をドカ食いしようとしますし、新しいことへの挑戦・学習から逃げようとします。

そんな風に、人間の脳とは、放っておくとすぐに怠けようとする「困ったヤツ」なのです。

しかしながら、そのように「困ったヤツ」だと思えるのは現代人にとってであって、昔の人にとってはそういった脳の性質は、生きていくために最適化された性質なのです。

人間の歴史とは、「飢え」と「戦争」の歴史でした。
そして、そういった「飢え」や「戦争」から解放されてきたのは、ここ最近の話となります。

少なくとも日本では、戦争によって命を失う心配も、食いっぱぐれる心配も、ほぼなくなってきていると言ってもよいでしょう。
それでも――私もそうなのですが――こういったご時世だから、将来のことが不安になるという方も多いだろうと思います。

しかし、昔の人は将来のことなど考える余裕もなく、その日一日を生きることができればよしとする時代であったという話を聞いたことがあります。

そして、長く続いたそのような時代に適応するためにできたのが、われわれの脳の「困ったヤツ」な性質ということができます。

昔はとにかく、余計なエネルギーの消費を避けるために、動かなくてもよいときは、なるべく動かないに越したことはないですし、たくさん食べられるときはたくさん食べたほうがよかった時代でした。
また、これは初耳だったのですが、われわれは放っておくと精神状態がネガティブな方向に動いてしまうのも、命の危険から身を守るために培ってきた性質であるそうです。

飢えと戦争から解放された現代

そして、今もなおわれわれが、飢えや争いの危険にさらされている時代に生きているのであれば、われわれはその時代に最適化された脳の性質を備えているということになりましたが、幸運なことに、われわれはそうした危険から解放された時代に生きることができています。

しかしながら、脳の性質は、依然としてひと昔前の時代に適応した性質をもち続けています。
そして、その性質をもったまま、この時代を生きていると、さまざまな不適応を起こしてしまいます。

たとえば、怠惰や過食によって生活習慣病になってしまうということが、その典型例ということができるでしょう。

そして、そのひと昔前の時代に過剰に適応してしまった脳をもつ者が発達障害人であるということも、この本に書いてありました。

私も、発達障害に苦しみ、その対処の方法が分からないときは、運動は全くせず、炭水化物をドカ食いし、怠けていました。精神状態も常にネガティブでした。
それでも、脳のそういった特性を理解し、少しずつ改善するための方法を実践していくことによって、以前とは比べものにならないくらいに活動することができるようになりました。

脳を現代に適応させるためには

したがって、ここから言えることは、現代に生きる人は、生きていくためには元々備わっている脳の性質にある程度逆らって生きていく必要があるということです。
そして、現代に適応した脳の性質を自ら作り出していく必要があるということです。

そのためのノウハウが、この本にはまとまって書いてあります。
そしてその、現代に適応した脳の性質を自ら作り出すということは、「脳の前頭前野を発達させる」と言い換えることができます。

一流のビジネスパーソンを見ていると、彼らは目先の得や快楽にとらわれずに、長い目で見て合理的な行動を取ることができたり、目標達成のために適切な方法を見つけ、それが大変なことだとしても、継続してやり続けることができます。

そしてなぜ、そのようなことができるかというと、脳の前頭前野が発達しているからであるということができます。

その前頭前野を発達させるための方法が、この本には書かれてあります。前頭前野の働きの中の

・ワーキングメモリ
・注意制御機能
・メタ認知
・No-Go(抑制機能)

を鍛えるための方法が、この本には書かれてあります。
そしてこの4つの力が高度に開発されている人が、現代に適応した脳の持ち主であったり「できる人」と呼ばれたりします。

そしてこの4つの能力は独立して存在しているわけではなく、重なり合ったり、補い合ったりする関係にあります。

それでは、これからこの前頭前野の4つの働きについて説明していきたいと思います。
なお、鍛え方に関しましては、以前の記事で紹介したことのあるものに関しましては、リンクを貼って紹介しますが、それ以外のものに関しましては、実際に著書を購入して確認してみてくださいませ。

ブレイン・マネジメント 脳を自由自在に操る科学的メソッド (アネモネBOOKS) [ 吉濱ツトム ]

価格:1,694円
(2021/5/29 19:38時点)
感想(1件)

前頭前野の4つの働き

ワーキングメモリ

ワーキングメモリに関しましては、以前、『今ひきこもりの君へおくる 踏み出す勇気』(KKベストセラーズ、2019年)のレビュー記事に書かせていただきました。
ワーキングメモリの箇所へのリンクを貼っておきます。

吉濱ツトム『今ひきこもりの君へおくる 踏み出す勇気』レビュー

ここでももう一度説明しておきますと、ワーキングメモリとは作業記憶とも言うことができます。
それは、作業をするときに必要な情報を一時的に記憶して、不要な情報を同時に削除処理する能力のことをいいます。

そしてこれは、会話をするときや、二つ、三つの作業を同時並行的に行うときにも必要な能力となります。

たとえば、あとで「仕事A」をしなければならないことを覚えておきながら、今は「仕事B」をするといったときに使う能力です。

そしてその鍛え方も、先程のリンク先に参考動画と共に貼ってあります。
動画の内容の一部を復唱した後に、逆唱するといった方法です。

今ひきこもりの君へおくる踏み出す勇気 [ 吉濱ツトム ]

価格:1,527円
(2021/6/1 16:26時点)
感想(0件)

注意制御機能

注意制御機能とは、何かに注意を向ける際のコントロール機能のことです。
たとえば、勉強をするときに、テキストの文章に注意を向けることなどです。
そして、その中身はいくつかあり、この本では3つに分けて説明しています。

①注意の集中
②注意の分割
③注意の切り替え

1番目の「注意の集中」とは、一般的に「集中力」と呼ばれているものです。
たとえば「30分間勉強をする」と決めたのならば、30分間よそ事をせずに、勉強の内容に注意を向け続けることです。

2番目の「注意の分割」は、何かに集中しつつも、適度にその他にしなければならないことに目を向ける能力のことをいいます。
これにより、集中し過ぎるあまり、時間が経ち過ぎていたという事態を防ぐことができます。

3番目の「注意の切り替え」は、たとえば勉強中に電話が掛かってきた場合、通話を終えた後にそのままダラダラとスマートフォンを見るのではなく、すぐに勉強に戻ることができる能力のことをいいます。

注意制御機能が発達している人は、やるべきことに集中しつつ目配りがきき、タスクを邪魔する誘惑からすみやかに離脱することができます。

メタ認知

メタ認知とは、自分の置かれている状況を客観視する能力のことをいいます。

自分を客観視することにより、感情の暴走や、思考のもつれに巻き込まれにくくなります。

メタ認知の鍛え方に関しましては、『今ひきこもりの君へおくる 踏み出す勇気』(KKベストセラーズ、2019年)のレビュー記事に書いてあるとおり、「自分のトリセツ」を作ることによって、自分を客観的に視るというのも一つの方法です。

自分がどういう人間であるかを知ることによって、自分の悪い癖が出たときに、「今、自分はまたこの悪い癖が出ているんだな」と認知することができるようになり、それに対処しやすくなります。

レビュー記事の、「自分のトリセツ」に関する箇所のリンクを貼っておきます。

自分のトリセツ(メタ認知)

そしてまた、このように、人間の脳はどのような性質をもっているのかについて勉強するということも、メタ認知を鍛えるための一つの方法であるといえるでしょう。

No-Go(抑制機能)

「No-Go(ノー・ゴー)」とは、日本語で言うと「抑制機能」といいます。

それは、今やるべきこと以外に何かをやりたいという欲求が出てきたとしても、それを抑え込んで、今やるべきことをやれる能力のことをいいます。

たとえば、勉強中に「スマートフォンを見たい」「横になりたい」という欲求が出てきたとしても、抑制する能力です。

そして、子供に抑制機能のテストをしたところ、我慢できた子供の方が、学力が高かったり、年収が高かったりします。

感想

昨今「行動することが大事」というワードをよく聞くようになりましたが、私は発達障害人であり、そのせいか、行動しようとすると、すぐに体調を崩し、風邪を引いて寝込んでしまうという症状に苦しめられてきました。

そして、「行動したいとは思っているけれども、このような理由で行動できない場合はどうすればいいのだろうか」と、よく悩んでいました。

しかしながら、吉濱さんの著書に出会い、そしてその手法を一つ一つ実践していくことにより、体調を崩すことも段々となくなり、少しずつ行動できるようになってきたように思います。

私の悩みに対する答えを与えてくれた吉濱さんには感謝しています。

まだまだ前頭前野の働きを私は鍛え切れておらず、時に精神状態が悪くなったり、思考の暴走を止められなかったりすることもたまにありますが、以前の自分に比べると、格段の進歩であると思わされます。

そしてまた、現代社会に適応させるための脳の作り方をこの本では紹介されていますが、現代は社会のあり方が目まぐるしく変化する時代であり、現代に適応した脳を仮に作ったとしても、いつかそれが通用しない時代が来るであろうということも書かれています。

しかし、もし仮にそういう時代が来たとしても、その時にはその時代に適応した脳をまた作っていけばよいのです。
一度脳を造り変えることができたのならば、二度目は一度目よりは容易であると思われるということも書かれています。

なので、まずは現代に適応した脳を作ることから始めてみてはいかがでしょうか。

最後に、吉濱さんはスピリチュアルの分野で活躍されている方ではありますが、私はクリスチャンになった影響もあり、スピリチュアル関連のことにはノータッチになったということも、付け加えておきます。

ブレイン・マネジメント 脳を自由自在に操る科学的メソッド (アネモネBOOKS) [ 吉濱ツトム ]

価格:1,694円
(2021/5/29 19:38時点)
感想(1件)

関連記事:吉濱ツトム『隠れアスペルガーという才能』レビュー

精神
妖月をフォローする
この記事を書いた人
妖月

妖月と申します。こちらのブログでは、主に実体験を元にした、メンタル系の情報発信していきたいと考えております。
趣味で絵を描いています。主にオリジナルメインで描いています。

妖月をフォローする
妖月のYouBlog
タイトルとURLをコピーしました